時間はあっという間に過ぎた。

「おいしかったです!こんな高級料理食べたの初めてです」

「喜んでもらえて光栄です…そろそろ着くかな、外出ますか」

甲板に出ると、涼しい潮風が体を包んだ。

西園寺は長い金髪を手で掻き上げた。

(映画のワンシーンみたい…)

やっぱりかっこいい。

さすが今人気急上昇の俳優なだけある。

思わず見とれる自分がいた。






「じゃぁ、今日はお付き合いありがとうございました」

普通車の窓の外から彼は言った。

「いえ!あたしこそ誘っていただいて、ありがとうございました!とっても楽しかったです。あ、あと、靴!大切にしますっ」

そこまで言うと、彼は優しくほほ笑んだ。

「おやすみ、葉月」


「…」



何も言い返せないまま車は発進。




(名前で呼ばれた…)






「///」






帰りの車内―――


顔の赤らみがシャンパンのせいか、彼の言葉のせいか、

あたしは必死で運転手にばれぬよう平静を装った。