「あ…あの、すみませんこの間は!あの…あたしあんまりテレビとか見なくて、芸能情報とか詳しくなくて……不審者扱いなんてして、本当に申し訳ありませんでしたっ」

一気に言い切った時、エレベーターが到着した。

「乗って?」

彼は笑いながら手を向けた。

「いいんです、俺は全然まだ知名度高くないし。芸能活動はきっともう辞めますし。それよりも、自分は葉月さんからの連絡が欲しかった…かな」

真っ白な歯を見せて笑う。

「あ、ごめんなさい…なんか、なんて連絡していいのか分からなくて」

「誤らないでください。そうだ、今から暇ですか?」

「へ?いい今からですか?あ、はい、暇です」

「じゃぁどこかご飯でもどうですか?」

「ご飯?」

「ってもうそんな時間じゃないですよね」

時刻はもう12時を回っていた。

「明日の夜はいかがですか?」

「だ、大丈夫ですけど」

「ほんとですか、じゃぁ7時にこの下で待ち合わせますか」

1階に到着。

あたしたちは出口に歩いた。

「あ、わかりました」

「突然ですみません。デートって誘ったことないから」

そう言いながら外に出る。

そしてそのまま、噴水の手前にずらっと並ぶ真っ黒な乗用車の一つの扉を開けた。

「どうぞ」

「いいいいえ!!走れば終電間に合いますから!!」

「いいんです、こんな夜道に女性を一人で歩かせられないですよ」

早くと目で訴える。

しょうがなくそのまま乗る。

「明日、お洒落してきてくださいね!」

そう言ってバタンと扉を閉めた。