11月に入り、菊花の薫る頃、早苗は過労からか大学病院に入院していた。

入院中は暇を持て余すことが多く、仕方なく本を読んだり、音楽を聴きながら過ごす日々だ。

時折見舞いに訪れる一貴に、大学の話や最近の出来事なんかを聞いては、早く退院出来ないかしら。とヤキモキとした気分になる。

せっかくの大好きな秋なのに、病院の中でなんか過ごしたくない。と早苗は自身の体の弱さを呪った。

衛生上の問題からか、大好きなテディベアのぬいぐるみも持ち込むことが出来ず、そのことが早苗自身の心をより不安にさせたのだろう。