ふっと、そのブースで貰った人魚姫の物語を読む。

始めの方からパラパラっとめくったが、真新しい情報はなく、小さい頃読んだそれと何ら変わりはなかった。


だから最後まで読むことがなかったんだと思う。今思うと。


やがてパタンと本を閉じ、必要な資料を借り出し、図書館を後にする。

辺りはすっかり夕暮れで、風も強かった。

木枯らし一号が吹くには若干早いだろうが、秋の深まりを感じた。

薄着からくる寒さに感じる一方で、心はホカホカした温かさを感じた秋の午後だった。