前来た時と変わらない景色。

いいや…知りうる限りずっと変わらない景色がそこにはある。

と言っても殆ど田んぼや畑。

それ以外のものなんて全くと言っていいほどないんだけど。

何にもない世界だけど、そこには確かに誰かが住んでいて、生活をしている。

そして、早苗自身にも何もない世界だけど、きちんと存在するものがある。

小さい頃の家族との記憶だ。

先ほど通った商店街での母との買い物、父がよく連れてくれていた川、母と毎日のように見上げた夜空…少しずつ薄れてはいくけれど、確かに早苗の小さい頃の記憶として存在するのだ。