「母さんのデザインは繊細で、落ち着いたものが多かった。
けれど、今の父さんは母さんのデザインを嫌うように、逆のものを書いている」
そこで一旦言葉を切った彼は渇いた笑い声を上げる。
嘲笑の笑いを。
「馬鹿だよな、母さんの死に捕らわれて今までの自分を見失うなんて。
…俺父さんに言ったんだよ。
母さんの望みは父さんに服を沢山デザインしてもらう事じゃないってな。
そしたら、何て言ったと思う?」
本当の笑みではなく偽物の、無理して作った笑みを顔面に貼り付けて彼が問う。
私は無言のまま首を横に振った。
「母さんが居なくなった分、俺が働かないとロゴスに影響がでるだろう…ってさ。
父さんが狂ったようにデザインを描いていたのは、母さんが死んで傷付いているからでなくて、仕事の為だったんだ。
信じられない」
最後の言葉は噛み締めるように、強く、太く放たれた。
彼が父への怒りや侮蔑を忘れないと胸に刻むように。

