ロゴスは、知らない人がいるのかと問いたくなる程によく知られているブランドだ。 そして、佐伯くんが着ている服もロゴス。 「知ってる。佐伯くんが着てるの、それでしょ?」 「そう。これ」 着ている服を摘んで顔を歪める。 それは、呆れとも苛立ちとも取れない、曖昧で苦しそうな顔。 「俺の両親がロゴスのデザイナーでさ。 ……この間、母親が死んだんだ」 唐突に言われたのは、彼にとって重大で重要な真実。 佐伯くんの辛さが分かるだけに、私は何も声をかけることが出来ない。 頷いてみせて、先を促す。