「増田さんっていうの?」
ゆったりと男性が口を開く。
思いの外に男性の口から自分の名前が飛び出してきたため、私は口をぱくぱくさせる。
「なんで、私の名前を…」
「他の店員が呼んでたの聞いたから」
「あ。そうか」
「あの時の求人娘」
という言葉と一緒に、そういえば自分の名前が呼ばれていたのを思い出す。
それにしても。
「あの!
いくらなんでも求人娘は酷いんじゃないですか?
せめてバイト娘とか金欠娘とかにして下さい!!」
打たれ強い私だったから良かったものの、私以外の人なら即大目玉を食らうとこれだ。
私が一人で頷いて、一人で自己完結していると、前方から男性の笑い声が聞こえてきた。
初めは笑いを押し殺していたが、最終的には堪えきれずに吹き出していた。

