でも、こちとらこの一冊に今後の生活がかかっているのだ。
そう易々と渡せるわけがなかろう。
だが、求人誌を掴む腕が疲れてきているのは事実で。
「あの…」
今まで冷戦だったが、一時休戦を申し出る。
「ちょっと腕疲れてきたんで…。
絶対に取らないので、ここに置きましょう」
ここ、とは本来この求人誌が置いてあった場所である。
数分前には一冊の求人誌が置いてあったが、だがしかし、今は大人二人にもみくちゃにされている大変哀れな求人誌と成り果てた。
この求人誌が最後の求人誌だったのだ。
故に、これだけ躍起になっている理由でもある。

