「じゃあメニュー決まったから呼ぶよ」


慎司がボタンを押すと直ぐに店員がやってきて、注文を取る。

こいつらに注文させておくと、余分な物まで頼むため俺がまとめて伝える。

最も、今日は慎司の奢りだから無駄に注文しても奴が困るだけなのだが。


「お飲み物は何時お持ちいたしますか?」

「あー…。食前で」

「かしこまりました。それではメニューを確認致します」


店員が一から確認をとっているが、はっきり言って面倒だった俺は半分どころかほぼ全てを聞いていなかった。

だからだろうか。
店員の
「以上で宜しいですね」
という問いに反応を示せなかった。

隣から慎司の小突きをくらってやっと魂が身体に戻ってきたのだった。


俺は弾かれたように勢い良く顔を上げると、神妙な顔をした店員と視線が絡まった。


「あ…」


思わず声を上げたのは俺。

口をあんぐり開けて、目を瞬いているのは店員。


それもその筈、その店員はほんの数日前、本屋で求人誌を奪い合った女だったのだから。