肩越しに睨んでやると一瞬身を強ばらせた慎司がいる。
が、次の瞬間、俺の意識は正面に座るもう一人の男へと向けられる。
「でもさ、何で家出したんだよ」
自称、爽やか系天才の加地鳴海。
確かに爽やか系男子だが、頭はいたって普通な為あくまでも自称。
「俺は両親の跡を継いでデザイナーになるなんて真っ平ごめんなの」
「そう?俺はいいと思うけど。蓮センス良いしさ」
「それでも!」
その後、鳴海から帰ってきた言葉は、自分から訊いといたわりには幾らかぞんざいな
「まぁ仕事につければ関係ないけど」
という言葉だった。
慎司はというと、いち早くメニューを開き、どれ食べようなどと呟いているし、鳴海は鳴海でポケットから煙草を出している。
さすがに食事中は止めてくれと言うと、渋々だが出し途中だった煙草を戻した。
ったく、どこまでまとまりが無いんだ?俺たち。
人知れず溜め息をつく俺であった。

