「いらっしゃいませー」
店内に入ると幾つもの明るい声で出迎えられた。
喫煙か禁煙かと訊かれたが、俺達全員喫煙者だから関係ない。
どちらでも良いと答えたら案の定、喫煙席に通された。
ちょうど昼時だったから、禁煙者を配慮してのことだろうが。
「それにしても珍しいよな。慎司が奢るとか言うなんて」
「まぁ俺もたまには友を労ってやろうと思ってな。
ちょうど蓮は実家追い出されたばっかだもんな」
席に付くなり目の前の男達によって交わされる会話。
けたけた笑いながら俺に話を振る慎司こと、正臣慎司。
スポーツマンでいかにも好青年といった容姿だが、実際はスポーツより文科系だったりする。
今日の昼飯を奢ってくれる奴だ。
「うるせぇな。追い出されたんじゃなくて、こっちから出てきたんだよ」
「強がっちゃって、蓮くんたら」
俺の左肩をバシバシ叩きながら言う慎司に苛立ちを隠せない。
恐らく今の俺のこめかみにははっきりと怒りマークが浮き出ていることだろう。

