それから、程なくして父は家を出て行った。
『仕方ねえから学費だけは出してやるよ。
けどな、それ以外は俺に頼るな。
自分で稼いで生きていけ』
そう言葉を残して。
私は何も感じなかった。
父が居なくなっても、嫌だった煙草の臭いが消えても、何も。
だって呼び止めても昔の父は戻って来ないから。
それから高校に入学した私は、やりたかった部活を諦めバイトに明け暮れた。
それでも高校生が稼げるお金などたかが知れていて、私は倹約生活を余儀なくされた。
もちろん、友達と遊びに行く事など到底無理。
指は家事のせいでいつも荒れていて、恥ずかしかった。

