━・9時過ぎ マンションの前・━ ほのかの父親は、エレベーターの前で自分の妻の姿を見つけた。 「香織、今帰ってきたのか?」 名前を呼ぶと、香織がこちらを向いてうなずいた。 「・・ええ。学校からほのかが早退したって電話があって」 「早退?・・なんでもっと早く帰ってこれないんだ、君は」 エレベーターが来て、2人で乗り込む。 「それはあなたが言えることじゃないでしょう」 香織が少しムッとしたように言って、 2人の会話は途切れた。 ・・ほのかのいる、13階まであと少し。