・・・やっぱり、か・・・・・。
僕はそう思い、彼女を見つめた。
「お母さんとお父さんが共働きで、
昔は家にいたら、2人は
喧嘩ばっかりしてた。
・・・でね?私まだ小さくて・・
たえられなくて、よく吐いてた」
「・・・・・うん」
僕はただ聞くしかできなくて、
返事をした。
「でも吐いたら怒られるし・・。
しばらくしたらね、2人は喧嘩、
じゃなくてね・・・、
お互い存在を無視し始めたの。
同じ部屋にいるのに会話もなく、
すごく静かなのに・・・・。
空気が、重いの。
すごく悲しかった。
そして、次第に‘私”の存在も
無視されだした」
・・・・存在の、否定。
僕はこの重さがわかる。
・・「重い」なんてものじゃない。
本気で、潰される程。
・・重い。
「愛された記憶もなくて、
話しかけても『あっちへ行って』
ふと、思ったの。
・・私は此処に、いるの・・?
・・なんて、ね」
彼女は、哀しく笑っていた。
「━・・・っ!」
その瞬間、僕は美吉を抱き締めていた。
ガシャンと、自転車が転がるけど。
時々通る人に見られてても。
「・・・ほのかは此処にいるよ」
不安定な彼女を抱き締めて。
心の闇を、取り除きたかった。

