でも、治也を好きな私にとって、幼なじみというポジションは誰よりも近くにいられるから、手放せなくて、告白なんて出来なかった。



そう思ってはいても、治也への想いは消えなくて、苦しかった時に、治也が家にやってきた。





それは晩秋のこと。
既に、吹く風は冬を思わせるような冷たさだった頃。





「蜜菜、入ってもいい?」





私はちょうど、部屋で勉強していた時だった。





「え、うん。治也?」





治也が私の部屋を訪ねてきたのは小学校4年生以来だった。





「どうしたの?わざわざ。」



「…蜜菜、なんかあった?」



「へ?」



「最近、なんか元気なさそうだったからさ、心配で。お前、ケータイ持ってないから家まで来た。」





いつだって、治也は私に優しくしてくれた。

それが嬉しくて、手放せなくて、でも幼なじみでは満足いかない自分に嫌気がさしていた。





「ううん、何も?」





私の嘘は、治也にはすぐばれる。

そんなのわかっていたけど、悩みの理由である治也には言えなかった。