胸が苦しくて、ズキズキと痛んでいるのに…

なぜか、涙は出なかった。





いっそ、泣けたらよかったのに…と、思ってもダメで。





「たっくん?ご飯よ。」





姉ちゃんが晩ご飯を呼びに来るまでの間、ずっとベッドの上でぼうっとしていた。





「なんだ、いるんじゃない。」





ノックもなしに、俺の部屋の扉を開ける姉ちゃん。
何度頼んでも、勝手に入ってくるんだよな…。





「たっくん、どうかしたの?」



「いや、なんでもないよ。」





姉ちゃんには、絶対的な信頼を寄せているけど…今は誰にも話したくなかった。





「たっくん…。」



「さ、ご飯冷めないうちに食べないとだよ。行こう?」





聡い姉ちゃんのことだから、きっと何かに気付いているんだろう。

けど…、そっとしておいて。





姉ちゃんは、何かを感じとってくれたらしく、いつもみたいに根掘り葉掘り聞いてはこなかった。





静かに、俺の小さな恋心は…終わりを告げた。

まだ、残り火が、パチパチと燃えているような、そんな気持ちに無理やり蓋をして。