佐藤はパタパタと走って健人先輩のほうへ行ってしまった。

短距離は、これから鬼のインターバルの練習か。





健人先輩と何か話ながら笑っている佐藤。

あいつが笑ってるだけで、部の雰囲気が明るくなっていることを…きっと気付いてない。



「あれ、涼平?サボりか?」





声をかけてくれたのは、最近仲良くなりはじめた細川蒼先輩だ。





「いや、なんかモチベーション下がってんすよね。
このまま練習したら怪我しそうなんで。とりあえず。」



「短距離は大会ないもんな-。」





蒼先輩は中距離選手。

だけど、シーズンオフになれば長距離選手としてマラソン大会に出てるらしい。



「やっぱ目標ないと、俺にはキツいっすよ。」



「…俺は、大会の間が開くときには必ず誰かの為に走ってたな。たとえ、エゴや自己満だったとしても。」





……?

誰かの為に走る?





「わかんね-か?
大会の為に調整するのもいいけど…誰かの為に、例えば支えてくれる人とか、元気づけたい人とかの為に走るのって案外楽しいぞ?」





……そうなのか。

モチベーションって、そうやって上げていくものなのか。



サッカーは練習試合を組めば、シーズンオフなんて無いに等しい。



だから、モチベーション下がるなんて経験したことなかった。

練習が怠いときはあったけど。