ふと大塚君を見ると、女子に囲まれている。

困りながら愛想笑いをしている。


そんな姿をじーっと見ていたら美羽チャンが横から顔を出す。

「嶺君ってかっこいいよねー。」


嶺君...?


「えっと...
嶺君って誰??」



うっとりしていた美羽チャンの目が驚いたように大きく開く。

「え!?
大塚君だよ!?好きなのに名前も知らないの!?」


嶺って言うんだー。

知らなかった...。

名前までかっこいいんだね。

「........うん」



えー、と美羽チャンが眉にしわを寄せながらあたしを見る。


「ちゃんと好きな人の名前くらい覚えとかなきゃぁー」


呆れた顔をする。


ちょっとむかついたけどそのまま体育の時間は過ぎた。





授業が終わったらすぐ、


靴をローファーに履き替えた美羽チャンは


あたしのそばから走って嶺君の所へ行った。



嶺君はというと、普通に笑いながら話している。



美羽チャンは嶺君の隣を嬉しそうに歩く。



なんであんなに楽しそうなの?



ヤダ。



なんでそんな仲良さそうなの?


ヤダヤダヤダ。



美羽チャンがちらっとあたしを見る。


目が「いいだろー」って言ってるように見える。