また瞳いっぱいに涙を浮かべている泣きそうな朱里の顔があった。


あちゃーと思いながら、急いで制服の袖で零れそうな朱里の涙を拭ってあげる。




「ごめん…言い過ぎた…」


「…別に…忘れてたわけじゃないもん…」


「うん…分かってる…」


「あたしだって初めては、航平がずっといいって思ってたんだよ…だから昨日だってずっと寝れないぐらいドキドキしてたんだよ…」


「…うん…」




朱里のグズグズ声の中に混じる言葉に何処か幸せを感じながら、しっかり聞く。




「だから、…忘れちゃうぐらいとか、言わないでっ…グッ…」




あぁ、また泣かせてしまった…


でも不思議と朱里が泣いてるのを見てめんどいとかは思わない。


多分、それは「偽り」などないたった一つの揺ぎ無い「恋心」に変わったから。


朱里だけがちゃんと好きと思えるようになったから。





【偶然の「偽り」ロマンス】


「……っ…やぱい…」


「へ…?」


「何か朱里の泣き顔見てたら、何か下がムラッと……明日じゃなくて今日しちゃう?」


「!?……変な事言わないでよ変態っ」


「そんな変態が大好きなくせに」


「っ……」


(あの日偶然抱いたキミへのキモチは無駄なんかじゃない)



*END*