何って、そりゃ好きな人が自分の席にお迎えに来てくれたことが嬉しすぎたからに決まってるでしょ。


て、まぁそんな事言える筈もなく




「別にー」


「…むかつく」


「っ!ひゃにすんにょよっ」


「俺に嘘ついた罰。」




そう言いながらあたしの頬を思いっきり抓る。


痛いけれど、でも、この時間が何よりも幸せ。


あたしにとってこれ以上の幸せはないってぐらい。




たとえ、その幸せが偽りで出来ていたとしても。




航平の質問攻めを軽上手くかわし、商店街の中を肩を並べて歩く。


和菓子屋のたい焼きに目を奪われていると




「朱里。」


「ん?」




声を掛けられ、顔だけを隣にいる航平の方を向かせる。


航平は俯き気に後ろ手で栗色の無造作ヘアを掻く。