ある土曜日の昼下がり。
ここちよい風は春の気配を運び、雲たちをゆっくりと動かす。

ふと、目をとじてみる。
庭の木が風にゆれ、風鈴の音色がひびく‥

一瞬でまぶたの裏はオレンジ色にそまり、目を開けなくても外の光がよくわかる。
ここは、一週間の疲れを癒してくれる魔法の場所。
いくら嫌なことがあってもここにくれば忘れられる。

『大丈夫だよ。』
だれかがそう言っているような気がした。

忙しさにおわれてだんだんと忘れていったもの。


そこにあるのはひとつぶの幸せ。
小さな小さな、幸せ――。

(終わり)