「じゃぁ、帰りにまた来ますね」


「ん……」




桜の花びらがまだ地面に散らばっている校門の前。


最初こそは嫌だった周りの視線も最近は、まぁまぁどうでもよくなった。


だからと言って、気にならない訳ではない。


目の前からなかなか去ろうとしない学ランを着た男の子に、眉を潜める。




「早くいきなよ」


「実帆先輩は、俺と離れるの寂しくないんですか?」


「…何をいきなり…」




と、言ったが本気で寂しそうに上目遣いで見てくる室井君の顔にキュンとしてしまう。




「寂しく、ないんですか?」


「……」


「実帆先輩…」


「っ寂しい……よ…ちょっとだけねっ、ほんのちょっぴりねっ」




顔を横に逸らして、ちょっとだけ本音を漏らす。


真っ赤になっているであろう実帆の顔に、陸は目を丸くする。


いつもは、何か延々と喋る室井君が何も喋らないことに不安になってくる。


チラッと目だけ、室井君の方に向けた瞬間。