=凪=

沢山走っていくと、男の子は、背の高い薮の前で立ち止まった。


「………こ、ここなの?ヒロくん」


私は、男の子を『ヒロくん』と呼だ。


ヒロ少年は、鼻を掻きながら、そうだよと答えた。



「この薮の先に、ザリガニが、沢山取れる池があるんだよ。兄貴がそう言ってた」


「え、お兄ちゃんが?」


「うん、俺は初めて来た」


「大丈夫なの?」



小さな私は、不安そうにヒロ少年の目を、じっと覗き込んだ。



「俺に、俺に任せとけよ」


小さな彼はそう言うと、私の手を取り、ずんずんと薮の中に入って行った。