=凪=

「お前さ、あそこの池って、ザリガニが沢山とれるんだぞ」


「池は知ってるよ。でも、あそこは立ち入り禁止区域じゃないの?」


「なんだよ、名取、お前怖いのかよ」



名取と呼ばれた女の子、つまり幼い私は、確かにちょっぴり怖かった。


でも、男勝りなお年頃。


何にでも立ち向かう根性だけは、誰にも負けたくはなかった。


「い……行くよ」


「それでこそ、俺様の親友だ!」


ためらいがちに答えた私に、男の子は悪戯っぽく笑ってみせた。