=凪=

「ふーん、ヤナザキさんって言うんだ……」

そのあと、クルミが呟いた言葉なんて、私の耳には入らなかった。

「そう言えばさぁ、来週、花火大会だよね?」



突然、菜津子が話題を変える。



その言葉に、街角に貼られた、あのポスターを思い出した。



あの時……


ここに来る途中のあの時。



大会を知らせる、見事な花火の写真を、私は眺めていたのだった。



「花火……いいよね」



ぽつりと言った一言が、二人を想像の世界へ誘う。