=凪=

独り立ちの前日に、母の強いすすめもあり、家族で食事に出かけた。


久しぶりの外食。


ずっと、避けて来ていた父が、目の前の椅子に座っている。


肩が、身体が、心なしか小さく見える。



髪にも、白いものがちらほら混じっている。


私は、なるべく、父を見ないように、下を向いていた。



なんだか、お店のその場所だけ、違う空間ができたような感覚になる。



おかげで、運ばれてくる、美味しいはずのお料理も霞む。



どんな味がするのかすら、上手く感じることができなかった。