「ナギぃーこれ、お願い !」 「ん ?」 忙しいさなか、窓から見える雲をぼんやり眺めていた私の耳に少し高めの声が聞こえる。 ここは都会の一角にあるビルの、とあるオフィス。 賑やかに人が行き交い、言葉とパソコンの音が途切れない場所。 そんななか、背後から思いもよらない小さな鈍痛と、書類の束が手渡されたのだ。 『っとにぃ…。私の時間を邪魔するなよ』 「痛いよぉ」 相手は、確認しなくても解ってる。 だから気持ちとは裏腹にちょっとおどけて答えてみせた。