=凪=

「知ってる?あいつね、いつも箱一杯に、バレンタインチョコを貰うんだよね。しかも8割は本命ね」



「うそ……」



「顔もいけるし、優しいから昔からモテるんだよね」


下を向きながら話していた菜津子が、チラッと私を見る。



「幼なじみの私からすればさ、不思議な話しなんだけどさ」


そう笑う。



「菜津子には、陸さんがいるから…」


今度は、私が下を向いた。



「あまり近くにいすぎるのも、相手の良さを見えなくするよね」



遠い目をする菜津子が、大人に見えた。


「いつまでもこのままで、いい訳なんかないんだからね」