時に訪問者は突如としてやって来る。


「…悪い。もう一度言って貰えるか?」

「ですから、貴方が元の世界に帰る方法があるのです」





青々と晴れた日の早朝から男はナオトの部屋を訪れてきた。

どうしてか黒いマントを羽織っている訪問者である男は、自らを魔術師と名乗った。


「そんな怪しげな格好の奴の言うことを信用しろと言うのか」

「ええ、まぁ」

「信用に足る証拠が無い」


すると、男は仕方がないと呟き、手のひらをナオトの目の前に差し出してきた。

訳が分からず、ただ手のひらを見詰めていると、一瞬だけ煌びやかな光を放ちナオトは眼を瞬いた。

なんと、男の手のひらにはオレンジの炎が轟々と燃えていた。


「これで私が魔術師であることを認めて下さいますね」

「……ああ」


これだけの芸当を見せられたら、誰だって認めざるを得ない。

ナオトはまた面倒事に巻き込まれるのかと、吐息を漏らした矢先、あの冒頭のやり取りが繰り広げられた。