“正直者は馬鹿を見る”って、社会に出てからは余計に実感する事はある。



自分に正直でありたい訳じゃなく、私の場合はおバカゆえにウソがつけないし。



“変わらない良い”って言ってくれる大切な人がいるから、このままでいたい…。




「ふふっ、稲葉さんもホント変ったわねぇ…」


「え、どういう…?」


「さぁねぇ?」


疑問符を投げ掛けようにも、含み笑いで上手く誤魔化されてしまった…。




「取り敢えず、私の話に戻すけどね・・・

よりにもよって、ソイツに現場を押さえられてた事に気づかなかったの私たち。

暫くしてからね、その男に私が資料室に呼び出されたのよ…。

その前置きを話すと長いし、鈴ちゃんには未だ理解出来ないから言わないけど。

その男が不正経理を働いてたのを朋樹が気づいて、問い質したのがキッカケよ…」


「・・・・・」


不正経理のカラクリは、輝も“鈴には分からない”って言って教えてくれなかった。



簿記2級保持していてもイマイチ経理が分かんないし、当然の判断だね・・・




「朋樹ってさ、あー見えて税理士の資格持ってるし、次の課長職が内定してたの。

だから課長職どころか、職を奪われるのを恐れて…私を襲おうとしたのよね…」


「美紀さ、ん…っ」


とうとう自分で琴線に触れた彼女に、私まで胸がグッと締めつけられた…。