広くて温かい胸と、頭を撫でてくれる大きな手。
ふわりと鼻腔を掠めていく、オリエンタルな色っぽい香り。
いつでも優しくて、ベタベタに甘やかせてくれるオトナの彼。
オマケにアマイ言葉まで貰えた私は、もう無敵だよ…――
そんな事を思い浮かべながら、急ぎ足で向かっていると。
「危ない!」
「えっ?」
後ろから慌てた声が聞こえて、振り向きかけた、その瞬間。
バサバサ――!
豪快な音とともに、ズシリと腕に掛かっていた重みが無くなった。
「わっ、うそー!」
慌てて床面を見れば、見事に散らばってしまったレジメの海。
すぐさま私は、座り込むと膝を床につけて資料を集め始めた。

