「……はい!」


あたしは黒のカーディガンを愛村に返す。



「はぁ?」


愛村はなにしてんの、とでも言いたげな瞳をした。




「か、返すの…っ!」


「……なんで?」


「愛村が風邪ひいちゃうでしょ!」


「俺、バカだから風邪ひかねぇもん」



「特待生のくせに!」



「それは、お前もだろ?」


「っ…それは……そうだけど!」



何て言って返せばいいんだろう……。

なんて、考えていると愛村が口を開いた。



「俺、暑がりだからカーディガンいらねーし、ブレザーで充分だし。」



そう言って灰色のブレザーの襟の部分をつかんで、微笑んだ。



「でも!!」


「あーもう、わかったよ!」



愛村はあたしの手元にある黒のカーディガンを乱暴に奪った。