「そのとき、お母さんがあたしに手紙をくれたの」


「…うん」


「好きな人、できたら教えてって。笑えるでしょ?」


「ふ、春さんらしいな」



お母さんが死んだあの日は、あたしの先なんか見えなくて、真っ暗だった。


だから正直好きな人とか、どうでもよかった。できるわけないって、そう思ってた。




「不思議だよね、ナツ」

「ん?」

「好きな人を作らないとか、彼氏を作らないとか、そんなことを言ってみても。恋をするのが、人間だよね」


「…沙南……?」



風が吹いて、目を瞑った。


その時がくれば、人とであって、そして別れるんだ。



「彼氏を作るぶんだけ、また、別れがあるのに…」


あれ…

あたしナツに何を言おうとしたんだっけ…



こんな難しくて変なことじゃなくて…。