ナツやんの目には、光が宿っていない。冷えきった、冷たい瞳をしてた。
「…あなた、誰…?」
「…あた…っあたしはAngelよ…!」
この期に及んでまだ言うか。
呆れた眼差しの中、女は続けた。
「…あたしこそが、ナツの彼女にふさわしいのよ!あんたなんかより、よっぽど!!」
顔を真っ赤にして、女は震えていた。
「…ねぇ?ナツ…?忘れてなんかないよね…っ?」
「………何を、てかお前ダレ」
目の前にいることすら、ナツやんは気に入らないらしい。
ナツやんがここまで拒絶してるのは、中学以来だ。
本当に悪魔のように冷えきった態度。久しぶりだなあ。
誰もがこの威圧感に生唾を飲んだ。
ただ、一人を除いて。
「……いだっ!」
「…こんのバカ!」
「…はあぁ!?」
絶対に関わりたくもないオーラを放つナツやんを、殴れるのはこの世で沙南ちんだけだ。
「……冷たすぎ、ナツ。」
「……うるせぇ。」
「……好意のある人に冷たくされるのが、どれくらい辛いかわかる?ダメだよ」
「……」
「…え…と、ごめん…ね?」
「謝ってんじゃねぇ!!!!!!」
シーンと空気が凍った。
「…ナツやんが沙南ちんを怒鳴るなんて……」
ありえない。
ありえなさすぎて、目の前に起こってることが理解できない。


