「……」
何て声をかけていいのか迷っているのか、ナツやんは沙南ちんを見るだけだった。
「……っ!」
………。場所考えてよ、うん。
何も言わないナツやんに、沙南ちんは抱き着いた。
言葉なんか、この二人の間にいるのかってくらい、以心伝心してるように想う。
俺と玲ちゃんが温かく見守っていると、
「……な…ナツに触るんじゃないわよぉおぉ!!!!」
ヒステリック女が叫んだ。
その声に驚いたのか、沙南ちんが抱き着くのをやめ、女のほうに視線をあわせた。
「……。」
きっと、怒鳴るよりも嫌味を言うよりも、無言が一番怖いように俺は思う。


