「ここ・・・・」


夏姫がポカンと口を開けたままになる。


車が停まったのはさっき瑞樹と食事をしていたホテルのエントランス。


「思い出した?ここは夏姫さんと初めて会ったホテル」


レイは夏姫が瑞樹とどこで食事をしていたかなど知らないから夏姫が驚いているのをそのせいだと思って言った。



「う、うん それもビックリだけど・・・さっきここで食事をしていたの・・・あっ!コート!」


コートは瑞樹が手にしていたからここに置き去りにされたか持って帰ったのか分からない。


「ここで食事をしていたんだ、僕は腹ペコなんだけど」


ちょっと拗ねたような口に夏姫は申し訳なく思った。


「ま、まだ食べていなかったんだね?」


「夏姫さん、軽くなら食べられる?付き合ってよ」


エレベーターが開いた。


アンドリューと呼ばれた男性が先に乗ると夏姫を乗せてからレイも乗った。


(どうしてホテルに来たんだろう・・・?)


エレベーターの中には3人しか乗っていない。


夏姫は階のボタンを見た。


(最上階・・・)


「レイくん どこに行くの?最上階にレストランがあるの?」


アンドリューが口元を緩ませたのをレイは見逃さなかった。


(レイ様はずいぶん可愛らしい方を見つけられたようだ)