聖夜の約束

一流ホテルのレストランはやはりおいしい。


おいしいけれど夏姫のお皿の中は中々減らない。


レイの事を考えると胸が詰まって食欲がなくなるのだ。


(・・・夏姫、レイくんに一生会えないかも知れないんだよ?)


心の中の声が聞こえる。


家を出る時、小雨が降っていた。


天気予報では小雨から雪に変わると言っていたのを思い出した。


夏姫はそっと腕時計を見る。


時計の針は9時をさしている。


約束の時間から2時間が経っていた。


(きっともうレイくんはいない・・・お天気も悪いし)


「イタリアンはあまり好きじゃなかった?」


瑞樹が夏姫の空いたグラスに白ワインを注ぐ。


「え?いえ 好きです おいしいです」


「良かった ここのお店はおいしいから君と来たかったんだ 特別な夜にね」


(特別な夜・・・憧れの長谷川さんと過ごしているのに・・・・舞い上がるような気分はどこかへ行ってしまった・・・)