『ほら、もうすぐ開会式はじまるからみんな座って待ってなさぁい!』
コーチの声が聞こえる。
二人は構わず見つめ合ったまま、やがて友枝が口を開いた。
『2年ぶり…か』
『……はぃ』
二人は、浜の近くまで行き、海岸の上に腰を下ろした。
『麻美ちゃんの"やり手の先生"が、まさかキャップ…友枝さんだったなんてね』
クスっと美夏は笑って言った。
友枝はタバコに火をつける。
『………。』
『麻美ちゃん今日でしょ?』
『もう席についてる。試合2組目だ』
友枝は続けた。
『一日目なんか引いてくれちゃって、まったく困ったおじょーさんだよ。
一緒に練習する時間は昨日の夕方からしかなかったのに…
本人はケロっとしてるんだからね。困ったもんだよ』
『あの子なら大丈夫だよ…友枝さんの教え子だもん』
教え子…か。
美夏は自分で言って、少し昔を思い出した。
『……?』
『パンチの効いた切れ味のいいフォーム…
どこかで見たと思ったら、思い出した。
2年前の千佳のフォームと同じ』


