乗り込むと運転手は一瞬驚いたような顔して、キョウスケを舐めるようにジロジロと見た。                              

「あんた、シライシさん?」                                   

 運転手は訝しんだようにそう訊いて、キョウスケは笑顔で「えぇ」と答えた。                        

「そうですかぁ。じゃー出発します」                               

 多少納得をしていない表情を浮かべていたが、そう言って運転手はタクシーを発進させた。                              

「何か他に言ってました?」                                   
「まーシライシさんの名前と外見くらいですよー。あんたのお兄さんかい?」                                
「いえ、親戚です。まぁ兄のようなもんですけど」