キョウスケはベッドに潜り込んで、その年齢の少年が泣くときのような、情けない嗚咽を漏らした。                          

「・・超えてやる」




 布団を包まりながら、キョウスケはそう呟いた。                         
 そうしなければ自分のこの悔しさは拭い去ることはできない。



 超える存在にならなければ、結局自分を手駒にしたセンセイを許すことはできない。



 キョウスケはその夜、自分に暗示を掛けるように何度も「超えてやる」と呟きながら眠りについた。



 キョウスケはセンセイに対しての尊敬の念すらも、恨みにも似た感情に置き換えようとしていた。



 そうでもしなければ、止めどない複雑な感情に耐えられないと、キョウスケの本能が判断した。    




 この日のキョウスケの決意は、もしかしたらセンセイは予測していたのかもしれない。



 そして、予測した上でわざと与えた最後の教えだったのかもしれない。




 そのことがこの先、どこにどう結びついていくのか、悶え苦しむキョウスケには知る由もなかった。