薄暗い街をRAV4のライトが抜けて行く。



もしかしたら、もう見ることのないかもしれない街並みは何も知らずに、いつもの週末を迎えていた。



ミクはボクの左手を掴んだまま、離さなかった。


そしてボクも絡めた指を離すつもりはない。



街を過ぎて海岸線にでた。



ボクらは信号で止まる度にキスをした。



高速に乗る前に店が僅かに立ち並ぶ駐車場に車を停めた。


ミクは夕食を買いに行き、ボクは電話をかけた。



「……先輩、忙しいところすいません。……結局、先輩に甘えて…。……。はい、大阪で…、…。すいません。………。えっ、仕事?……。ありがとう御座います。……。」



先輩はレコーディングの合間にボクの為に色々と都合してくれていた。



「サキにも連絡しとけよ。カイちゃん、…頑張れ。」

ここでの、この一言が嬉しかった。






「アキト……。」


ミクはマクドの袋を持って帰ってきた。


「うん、大丈夫。準備は…、頼んだんだ。大阪だ。行こう。」


「えっ?そうなの。ありがとう。……テリヤキだよね。」


「ははっ、そうだよ。」


「コーラも……、行こうか」


ミクは最高の笑顔で笑った。


ボクもひとつ笑顔を返してミクの手をとった。





車は大阪へ向けて高速を走る。


関門橋の夜景も、寂しさは伝えず、世界が変わるボク達をあらわしているようでもあった。



ボクはミクの左手を強く握った。


伝わるミクの温もりが心地よく、握り返したミクの笑顔がボクに力をくれた。





ボクはこれから、この笑顔を絶やさないように……、例え何が起ころうとも……、全てをかけて包み込み守っていこう。


この笑顔の裏には不安がきっとあるだろう。



それも全て抱きしめて彼女を愛し続け、2人で幸せになろう。



そう強く心に誓い、ボクはミクの肩を抱き寄せた。



明日からの笑顔に満ちた、キミの居る幸せを夢みて………。