少し肌寒い空気は重なり合う冷たさと合わさるようにボクを取り囲んだ。



開いた扉の向こうにはヨウコが立っていた。


ヒカルの手を引いて……。



「ヨウコ……何を?……」


「ママ?どうしたの?パパ?」


「出て行くのなら自分でこの子に説明してよ。あなたは、私も子供も捨てて行くんでしょ!」


「パパ?どっか行くの?ねぇ、ママ?」


「…………。」


「あなたは言えないでしょ。ヒカルに自分と同じ思いをさせるの?それでも捨てられる?」


ヨウコはキレてる。


そしてボクが一番できない事を知っていた。


「あなたは家族を壊す事が本当にできるの?家族が大事じゃないの?大事だって言ってたじゃない。」


「…………。」


ボクは…。


「できないなら…、考え直して……。もう一度、ヒカルの為に…やり直そうよ。ねぇ…。」



ヒカルは……、ヨウコの怒った声に驚いたのか、それとも、内容がわかっているのか…、泣き出していた。



「ヒカル……。」


「……パパぁ〜」


ヒカルの泣き顔がボクに突き刺さる…。


でも…………。




「ヒカル…。ゴメンね。パパは…ヒカルと一緒にいれなくなったんだ。」



「ん?パパ?どこか行くの?いつ帰ってくるの?」


「ゴメンね。遠くに行って……、もう帰ってこない…。」


「ヒカル…。パパはママとヒカルが嫌いなんだって…。だから、遠くに行くんだって…。」


ヨウコはボクを睨んだまま言った。



「ヒカル……。違うよ…。パパはヒカルとママが大好きだよ。でもね、それ以上に愛してる人がいるんだ。」


「……」


ヒカルもヨウコも何も言わなかった。


「ゴメンね、ヒカル。ママと幸せになるんだよ。ママを頼むよ。」


それを聞いてヨウコは立ち上がった。


「どこまでも……。ちゃんと…理由も言いなさいよ…。浮気したって…、女と…逃げるって、家族を捨てるって…!」


ヨウコはボクを上から泣きながら睨みつけていた。