凍りついた空気が動けなくさせる。


口を開く事さえ許さない冷たい空気だ。


秒針の音が響きわたる。






「えっ…、今…、なんて…黒岩さん?上の?チカちゃんの……お母さん?何を言ってるの?」


ヨウコの反応はごもっともだ。


子供の友達の親、しかも、自分の友達でもある人。


その人の名前が出てくるとは普通思わないだろう。


「………そうだ。すまない。」


オレには言葉がない。



「何なの?どうして?なんで?」


「オレが全て悪いんだ。彼女もヨウコも悪くない。すべて……」


「……………なんで…」



「オレが…、オレが悪いんだ。……週末までに荷物はまとめて出て行くよ。養育費とマンションのローンはオレが払うからこのまま住んでもらって構わない…。慰謝料は貯金を全額……」



「ねぇ。……黒岩さんと出て行くの?」


ヨウコはうつむいて涙声だった。



「……その予定だ。」


オレは声をつまらせながら答えた。







「ちょっと……。考えるから……。」



そう言ってヨウコはヒカルが寝ている部屋に入って、その日は出てこなかった。









次の日…。



ヨウコは目を腫らしていたが……。


何もなかったかのように朝を過ごし、仕事から帰っても普通に過ごした。


ボクは部屋でスーツケースとダンボールに荷物をまとめる。


ヨウコは見て見ないふりをして……、話合いもなく、むしろ、無視するように、部屋にこもった。




そして、そのまま……。

金曜日の夜。


ボクが家族と過ごす最後の夜を迎えた。