もう、随分、秋風は冷たかった。


いつもと同じ月曜日のだるい朝を迎えた。


違うのは、オレの方か…。




少し早い時間に家をでるとゴミ捨てに出たミクに会った。


「おはよ」



オレはちょっと小走りに駆け寄って同じエレベーターに乗った。



「おはよ。仕事?早くない?」


「あぁ、朝一番で辞表出そうと思って…」


「あっ…、ゴメン。そうだよね。仕事も…。」


ミクは俯いて言った。



「大丈夫。キミさえいれば…」


ボクはミクを抱き寄せてキスをした。


「んっ…。ありがとう。ワタシも…。」


そしてミクからもキスをされた…。


「ありがとう。頑張ってくるよ。ミクも…頑張ってね。」


ボクらはエレベーターを降りた。



「うん。頑張るよ。いってらっしゃい。」





ボクの朝は一変した。
頑張って辞めてきますか…。







「はぁ?宮本君、ちょっと…今…何て?」


会議室に呼び出した支店長は、突然だったせいか、声がうらがえっていた。



「申し訳ございません。あと…、今週いっぱいで残りは有給を使いたいのですが。」


「いや、ちょっと待て…。何だ?どうして?まさか…、他社に…。」


オレは正直、この支店長が好きではない。ちょっと感じ悪いし、ネチっこいのだ。



「いえ、次は決まってません。理由は…、色々、事情がありまして…。」


「ちょっと待て。常務に相談するから…。」


そう言って、会議室の電話で本社に電話をし始めた。


弱っ!!



「すいません。引継の時間がありませんので、松丸代理と引継に行きます。」



オレは無視して会議室を出た。



常務はオレの新人時代の支店長で上司だった人だ。仕事の師でもある。


今は話をしたくなかった。




会議室のドアの閉まる音が寂しく聞こえた。