買い物を終えて、コンビニを出る頃はさらに雨足が強くなっていた。

雨のデートはなんて事ない会話のままで、もう帰路だ。

まっ、人の妻との買い出しなんてこんなもんだ。

「んっ?」

オレのカサがない…。

使い捨てだし、持って行かれたかな。

「傘、ないんですか?どうぞ宮本さん。一緒に入りません?」

奥さんは笑顔で言ってくれた。

「スイマセン。あっ、傘持ちますよ。」

ちょっとドキッとしたが、特に意味なさそうだ。ユキの事で過剰反応しすぎだ。



「聞いてもいいですか?」

帰り道は奥さんから話かけてくれた。

「初めて会った時ビックリしてませんでした?どっかで会った事あります?」

うわっ、それ来たか。

ユキの事は言えないし、考えても良い言い訳などなかった。


「いやいや、可愛い人がいる、好きなタイプって思って。」

嘘ではないが、条件反射的に言ってしまった。

沈黙。

…笑ってくれるか?って思ったのに。


「わたし……………ましたよ」

雨でよく聞こえなかった。

「んっ?何て…?」


とんっ。


「私も好きな感じって思ったって言ったんです!」

彼女はボクの胸に額を押し当て今度は聞こえるように言った。

酔ってんのか?

一瞬、そうも思ったが…。

しかし、どうする?

彼女とボクの立場じゃなければ、間違いなく抱き締める。

しかし………。

理性と欲望の戦いだ。考えるより言葉がでそうだ。




ちょっと待て、オイ!

ボクは何を言おうとしてる?






「ありがとう。ボクも好きだよ。」

もう、ダメだった。

頭のなかでは細かくツッコミながらも、彼女を抱きしめていた。




後になって思えば、一目惚れをユキに似てるからだと言い聞かせ、自分を誤魔化していたのかもしれない。