店を出る頃も雨は降り続いていた。


むしろ激しくなった気さえする程だった。



21時にもなると街は人通りも増してきていた。

このくらい人が居ればもう、目立たない。





「行くよ。」

「うん。」


ボクはキョウコの手をひいた。


アーケードを抜けた所からは1つの傘に入った。


何気ない会話と雨の匂いと女の香。



酔いも合わして鈍りそうな感覚を必死でつなぎ止める。


ミクのように溶ける事は一度もなかった。





いつもの女マスターの店は多くの客や常連が来ていた。



ここならそれなりに何があっても対応出来るだろう。


マスターも常連もオレが女連れのときは、そういう時だとわかっている。


周りと軽く挨拶を交わし、カウンターについた。

「ねぇさん、よろしく。キョウコは何がいい?」

オレとマスターは仲がよすぎて姉弟みたいで…、あえてねぇさんとよんでいた。



「秋人はボトルからでいいのね。彼女は?」


「あっ、カシスオレンジで…」




「アキトさん。久しぶりっす。」

「さすがに可愛い子ですね。」

常連ズ、うるさいよ。



顔見知りの常連から見れば楽しくてたまらないだろう。

今から、修羅場が見れるのだから。


人の揉め事は密の味ってか?




とりあえず、始まる普通の会話と会社の愚痴を笑顔で受け流した。


顔はいつもの笑顔のままで……、






心の中で葛藤が始まる。

このまま、程よく酔わして23時に電車に乗せれば問題はないのだ…。



今まで通り、快楽に酔いながら、このイイオンナと楽しむのも1つの楽しみではあるのだ……。




小沢恭子はイイオンナには違いない。


それだけでも男としてつなぎ止める理由はある。


しかしミクでいっぱいのボクには難しいかもしれない。



さぁ………