次の日は朝というよりも昼に近い時間に起きた。


時間はどんなに惜しんだところで同じように時を刻む。




別にどこに行くわけでもなく、ただ二人で時間を過ごした。


近場の温泉に行き、ゆっくり遅めの昼ご飯を食べ景色の良い山あいをドライブ…。


いつの間にか、17時前で最初に会ったコンビニについた。





「また、来週…逢いたいな」


口から自然に言葉が出た。


いい天気のせいでかけたサングラスがボクの表情を隠してくれた。





「うん、でも…。最近、時間取れなくて…。」



それはそうだ。きっと今日もミクは無理して時間を作ったに違いない。



それでも………



「いいよ。ミクが抱きしめてくれるなら……。ミクの僅かな時間でもいいからボクにくれないか?」



今、考えると…、きっと、どうかしてたんだ。
ボクはその頃、疲れていたし、仕事も色々あったし、とても寂しくて…。


いや、違う。ボクのすべてでミクを愛さないと消えてしまいそうな気がした。


何より、ミクがボクのすべてになっていた。




「…うん。なんとか時間作ってみる。また、連絡するね。チュッ。」


ミクは最初、少し哀しげな表情を浮かべたが、笑顔でキスをしてRAV4の助手席から降りた。





バックミラーは振り向く事のないミクの背中を映し、それが寂しさで歪む頃には、ミクを枠から消していた。






しばらく歪んだままのハンドルを見つめた。


なぜ寂しくなったのか…、なぜ雫が伝うのかはボクにもわからなかった。


こんな男は嫌われる。


それはイヤというほど解っている。


それでも、感情を抑えられないほど…、愛してしまったボクのミスだ。




誰かをすべてにして愛してしまった天国は知っている。


だが、手元になければそれは地獄の苦しみだとも知っていた。



明日からの日々を考えないように、無理やりスイッチを切り替えながら、ただ、家への高速道路をとばした。