「じゃあ、この辺で…。」


「うん…。アキト?なんかあった?」


「ん?何でもないよ。夜メールするよ。」


「うん…。ホントになんでもない?」


「あぁ、大丈夫。」


カッコ悪くも、ボクの複雑な何かはミクにはバレていたようだった。


ボクはミクの肩に寄りかかって、そして、キスをした。


手を振りながら笑顔で遠ざかるミク、ボクも小さく手をふった。




「こんなもんさ…。」


ボクはボリュームに手を当てて、アクセルを踏みこんだ。


ただ、タバコをふかし、音楽は腰もとに響くだけだった。


海岸線を飛ばして、いつもの海を見に来た。


ちょっと前にミクとも来た所だ。





ボクは特別何も考えず、ただ夕日を見ていた。


スピーカーから流れる昔の先輩の静かなピアノバラードが目の前の夕日を歪めた。



そう…、特別何もない…、悔しくも、きつくも…、悲しくも…、ただ……。



ボクは、ハンドルに突っ伏した。





「ふぅ〜、よし、帰ろう。」





一体、どれとどれのスイッチを切り替えたのか、わからなかったが…、とりあえず、お父さんにはなれていた。





そして、今から、また、ボクの日常が始まる。