「最近、休日出勤多いね。」


「まぁね、平日に早く帰る分、仕事もたまるわな。」


「大変だね。」


「あぁ、まっ、行ってくるよ」


「帰り遅いの?」


「ん〜、そうでもない。行ってくるよ。」


「はい、行ってらっしゃい。」




土曜日の朝の繁華街。人気のない駐車場で、助手席を片付けた。


HDDの音楽をかけたままミクを待つ。

3曲目のギターソロの途中で、RAV4の助手席が開いた。


「音、大きすぎ。」


何ちゅう第一声ですか?

「おはよ。どこいく?」


ボリュームを下げながらボクから聞いてみた。


「ん?どこでもいいよ。」

「ん〜?たまには温泉とか?」


「えっ?今から?」


「んっ?じゃあヤメタ。どこ行く?」


とりあえず、RAV4は都市高速にのった。


「買い物行こう。」


あぁ、やっぱり。

そのつもりだよ。


「あぁ、買うもの無いけどね。」


「い〜の。楽しいから。」

「ボクもい〜よ。ミクとなら…。」


ボクの左手はミクの右手と重なりお互い握りあう。


少しの時間もムダにはしたくなかった。




生活基盤のない街では、ボクらも普通に溶け込む。


ミクは本当に何を買うわけでもない。


時折、立ち止まるけど、ほとんどが、ただ、ぼくの手を握り歩くだけだ。


普通にランチを食べ、精算しようとすると、ワリカンしたがる。


そんな、何でもない事の全てが愛おしく楽しい時間だった。



そして、いつも通りの休憩へと流れていく。


ボク達は形のないものを求めて、お互いを求め合った。


ボクはミクの至る所にキスをして、ミクもボクにキスをする。


気が遠くなる程の快楽が愛ならば、こんなにわかりやすいモノはないのに…。